スタッフBlog

2016.7.26

岐阜県立森林文化アカデミー 小原勝彦准教授からのコメント(菅野)

2016.7.26

Category: 耐震補強

昨年、弊社の設計で浄土真宗本願寺派 本願寺岐阜別院 本堂の耐震改修工事が完成しました。


このご本堂は、外陣だけでも300畳の広さを有する大伽藍です。

その耐震補強工事の設計を依頼されたことは、光栄の至りではありますが、なにしろ国内でも類例の少ない設計なので、

木構造の専門家、岐阜県立森林文化アカデミー准教授 小原勝彦先生にご指導を仰ぎました。

先生には大変お世話になり、心より感謝しております。この度、以下のコメントが届きましたので、ご紹介します。

浄土真宗本願寺派 本願寺岐阜別院 本堂 の耐震改修について
 
岐阜別院 本堂の耐震改修で、私は主として3つのことに関わりました。

まず、耐震診断および耐震補強計画を実施する際、限界耐力計算に関する技術的アドバイスの実施です。

限界耐力計算とは、構造設計者でさえも実施できる実務者は非常に少なく、難易度の高い構造計算になります。

菅野企画設計の担当者(前嶋英孝)が、月に2回程度の打ち合わせを実施しながら、約1年間かけて限界耐力計算に取り組みました。

多少構造の知識を有していたとは言え、通常の実務の間の時間で限界耐力計算をマスターしたことは非常に素晴らしいことです。




次に、
補強工事の際、構造的納まり(特に面格子耐力壁)に関する技術的アドバイスの実施です。

この面格子耐力壁は、私が開発した高強度な面格子耐力壁であり、通常の耐力壁(筋かいなど)の3倍以上の強度があります。

通常の耐力壁は、50mm程度の変形で破壊してしまいますがこの面格子耐力壁は、200mm程度変形しても破壊することは無く、非常に高い変形性能があります。




最後に、
補強前と補強後における常時微動測定を実施して、第3者として耐震補強の効果を確認しました。

固有振動数について補強前は1.1Hz、補強後は4.1Hzとなりました。

これは、補強前は大地震で倒壊する状態、補強後は大地震で20cm程度変形する状態を表しています。

また、弾性剛性(建物の剛さ)について、補強前に対して補強後は1.8倍。

最大耐力については、補強前に対して補強後が3.4倍となりました。


限界耐力計算に自ら取り組む姿勢や、高強度面格子耐力壁などの最新技術の導入など、菅野企画設計の設計に対する積極性や柔軟性を感じられました。

そして、一般的には実施しない、補強の効果測定(常時微動測定)を実施したことは、設計に対して非常に高い自信がないとできることではありません。技術力が高い実務者と一緒に仕事ができたことを非常に嬉しく感じています。

 
岐阜県立森林文化アカデミー
准教授  小原 勝彦
 

記事一覧