真言宗 光明院 全伽藍整備 ご相談を受けた折、「遠隔地なので交通費と移動にかかる人件費が追加になりますが…」と申し上げたところ、「少々経費がかかっても、しっかりした設計をお願いしたいんです」と迷いのないご返事。大変うれしく思う反面、その期待の大きさに緊張して仕事にとりかかりました。依頼された設計は、木造本堂の耐震補強と150年以上の歴史を刻んだ客殿の耐震改修そして大玄関と庫裡の新築でした。約2年の工事期間を経て、無事全伽藍の整備が円成しました。 ■千葉県流山市 ■木造平屋建て■床面積/本堂 168平方メートル(51坪)、客殿・玄関 276平方メートル(83坪)■2011年10月竣工 本堂、大玄関、客殿の破風板がリズミカルに並びます。本堂の屋根は瓦から銅板に葺き替え、大玄関は新築、客殿は奥に曳家し、前面に応接室と配膳室を増築。客殿の向こうには新築の庫裡が見えます。本堂の前の大木は、珍しい多羅葉(たらよう)の木です。 大玄関屋根はちょっと民家風。既設客殿の屋根にマッチするようにデザインしました。 堂内は歴史を刻んだ木材を活かしながら、密教建築ならではの雰囲気を醸し出すように、欄間は菱格子、窓には組子の細かい障子を建てこみました。また、天井は格縁天井に、鴨居は彫りの深い虹梁に取り換えるなど、より品格の高い本堂に生まれ変わりました。 本堂をジャッキアップして、鉄筋コンクリートで基礎を造りました。 本堂は耐震診断の結果、筋かいによる補強を採用しました。 土葺きの瓦屋根から銅板に変え、軽量化を図りました。 客殿は軸組だけにして、ジャッキアップ。鉄筋コンクリートの基礎を造って曳き家工事で移動しました。 お墓参りに来た方のほとんどは、ここでお線香に火鉢で火を付けてもらいます。その時交わされる挨拶がお寺と檀家の貴重なコミュニケーションになっているとのこと。 客殿玄関ホールから本堂は、幅1間のまっすぐな廊下でつながっていて、その途中に大玄関もあります。段差もありません。 玄関ホールに続く和室は歴史を刻んだ梁、床板が露出し、薄暗い雰囲気でした。そこで、屋根に採光窓を設け、天井からその光を室内に導きました。吹き寄せ桟の障子も再利用です。 客殿は、玄関ホールから15畳の和室さらに、10畳二間が庭に向かって続いています。部屋境の欄間には、境内と近隣の風景をオリジナルデザインした透かし彫りの板をはめ込みました。 客殿の縁側から整備したお庭が楽しめます。 大玄関は本堂と客殿の間に新設しました。上り框、式台は桧で造りました。 和風の玄関ホールから、アンティークなインテリアの洋室が続いています。10帖大の広さを確保し、窓からは庭が楽しめます。お参りの待合として利用していただきます。 落慶法要には、多くの随喜寺院と檀家の皆様が参集し、盛大に厳修されました。 ▲大きい写真にポインタをのせると白い矢印が出ます。クリックすると次の写真に移動できます。 ▲小さい写真をクリックすると、該当写真が拡大写真として表記されます。 一覧に戻る