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2019.7.16

岐阜県 曹洞宗寺院の元坐禅堂?。耐震診断と伽藍の変遷も考察(大江)

2019.7.16

Category: 耐震補強

岐阜県のお寺から、境内に建つお堂の耐震調査を依頼され・・・
早速、前嶋チームの3名に長岡を加えた計4名で、調査に行くことになりました。


下準備として、インターネットで公開されている【J-SHISマップ】で、現地の表層地盤増幅係数を調べました。



赤色に近い地域ほど、地震時に大きく揺れる地盤を示しています。
お寺の境内は水色の範囲にあり、地震時には小刻みに揺れる、硬い地盤であることが分かりました。
地盤種別は【第一種地盤】相当です。

さらに、都市計画図で敷地にかかる法律を調べ・・・
お寺から事前にお借りした図面で間取りの概略を確認をして、準備完了です!

 

今回の調査は、いつもと少し違います。

「この寺は修行道場だったので、かつての坐禅堂ではないか。もしそうなら、当時の形に戻して後世に残したいと考えています。耐震診断だけでなく、元の形も調べてもらえませんか」は住職。

そこで・・・
「柱に残るほぞ穴や小舞下地のえつり竹の差し跡なども調査して、記録に残すこと」
現況調査に先立ち、所長の菅野から指示を受けました。




▲柱に差鴨居が組み込まれていた跡



▲柱に残る土壁の跡

当日は、大工にも協力してもらい・・・
天井や壁、床の一部をはがし、普段は目に見えない箇所も丁寧に調査しました。




▲床材の調査

床をはぐると・・・畳の下地板が現れ、その下には伝統的な三和土の土間が残っていました。
外壁をはぐると・・・火災にあった跡が現れ、
天井をはぐると・・・明らかに新しい垂木が姿を現しました。

住職も、調査の様子を興味深げにご覧になり・・・「面白いですねえ」

 

事務所に戻り、早速、現況調査を図面化。それに基づき、耐震診断と建物の変遷の考察を進めました。

数日後、住職からお寺で見つかった写真が送られてきました。



▲大正13年ごろの姿

その姿は、調査当日、菅野が現地で描いた建物の外観予想図とほぼ一致しました。



しかし、調査の結果から、より詳細に考察すると・・・
このお堂は、もともとは平屋建ての坐禅堂であった。
その後、外壁を取り払い、幅1間を四方に増築。屋根を二層に変え、床に畳を敷き詰め観音堂に改築した。
しばらく雲水が勉強する衆寮としても使われていたが、お寺が保育園を運営するようになると、床に板を張り遊戯室として利用した。

観音堂に改築された時、坐禅堂の宝形屋根の瓦を二層屋根の上層に利用したのではないか?など、興味は尽きませんが、これ以上は、さらに詳しく調査しないとわかりません。


約1か月後、菅野と前嶋が、耐震診断報告書とお堂の変遷の考察をお持ちしました。

当日は、住職始め、県文化財保護協会理事や市史編纂編纂室の方も顔をそろえ、説明をお聞きになったそうです。

さて、どの姿に戻すのか?


菅野企画設計は、豊富な経験をもとに・・・
建物の歴史的価値を損なわない耐震改修の設計にも、力を入れています。

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