日本医師会 会長 唐澤祥人著の「医師の主張」を読みました。
最近、医療崩壊という言葉を最近よく耳にします。
産婦人科の医師がいない、小児科医が足りない・・・とテレビ番組で報道されたり、
「寝たきりの母が入院したんですが、どうせ直ぐに追い出されるから・・・次の病院を考えておかないと」なんて信じがたい話を知り合いから聞いたり、
「医療に対して国が今のままの政策を続けるなら、もう診療所をやめたい」と、力なく友人の医師が話したり・・・
一体何が起きているの?それがこの本を手にした動機です。
しかし、読み進むに従って、本の内容というより、医師会の会長が自ら「いま、ここまで言わねば、取り返しのつかいことになる」と筆を執る真摯な態度に感銘を受けました。
<福島県立大野病院産婦人科医逮捕事件>
2004年12月17日に帝王切開術を受けた妊婦が、出血により死亡する医療事故が発生した。その後、2006年2月18日、福島県立大野病院産婦人科の医師が業務上過失致死罪及び、異常死の届出義務違反(医師法違反)で、刑事事件として逮捕、起訴され、現在、係争中である。
この「刑事事件化」の影響は計り知れないものでした。 リスクの高い医療に進んで取り組もうとする医師のモチベーション(意欲)を、著しく削ぐ結果になってしまったのです。
具体例を挙げながら、一般読者に自分たちの窮状を訴え、理解を求める。そこには「お医者様」と呼ばれて威張っている、そんな姿はありません。
実は、私がこの本を読みながら感じ続けていたこと。それはわが建築士会の不甲斐なさです。建築士が悲鳴を上げているというのに……
姉歯元建築士が起こした「耐震偽装事件」を知らない人はいないでしょう。あの事件を受けて、国は建築基準法と建築士法の大改正に踏み切りました。それは仕方がないことだったとはいえ、その内容たるや、建築士の仕事を無駄に増やし、責任を重くし、違反罰則を法外に増やすというだけのものでした。あまりに辻褄が合わない法律だったため現場は大混乱。その煽りを受けて、工事会社が相次いで倒産しました。しかし、あの耐震偽装事件の責任者は決して建築士だけではなかったはずです。計算書を有料でチェックした行政の責任は一体どこへ行ったのでしょう。
現実にそぐわない法律は、意味のない建築費の増額を生み、確認申請の審査時間を引き延ばしました。当然、建築主は経済の観点から建築士を非難しますが、重すぎる罰則の前に建築士はなす術がありません。建築士は今本当に疲れています。
このままでは、社会資産になるような建築の設計を夢見る若者、特に構造を担当しようとする人材は激減するでしょう。建物の構造設計をしてもらおうと思っても計算をしてくれる技術者がいない!小児科医が足りない、産婦人科医が足りないという医療現場が今抱える問題は全く人事ではないのです。
「身につまされる」この言葉が読書後の実感でした。