町屋大工棟梁 山本 茂 さんが書いた、「京 町屋大工千年の知恵」を読みました。
実は私も、古い町並みで有名になった「岐阜県高山市上三之町」のうなぎの寝床で幼児期を過ごしました。ただ、伝統的建造物群保存地区に指定されてから、昔より町並みが古くなってしまいましたが……。最近は大変な町屋ブームなんだとか。伝統的な日本建築が注目を浴びることはとてもうれしいことだと思います。

さて、この本を読んで、京都みたいな特殊な町でも「建築基準法」に従って、そのために苦労して、法律とのいたちごっこをしながら木造建築を建てているのか!と、改めて思い至りました。
建築基準法に従って建てること、それは当然のことです。でも、ちょっと割り切れない気持ちが湧いてきませんか。長い間守られてきた工法や町並みが、今の基準だけで判断されるのは、先人に対して失礼じゃないの?

私は古民家再生の設計も手がけているので、本当に今の建築基準法に従うことだけが正しいのだろうか?と、いつも考えます。100年経った家でも、柱を差鴨居(厚鴨居)と足固めで補強した家は全く狂いもなく建っています。でも、建築基準法に従って壁倍率による構造計算をすると、耐震力がとても低いことになってしまいます。土壁の粘りや大工さんの木材加工を構造耐力に考慮する「限界耐力計算法」もありますが、現在の建築基準法では、その計算方法の採用は事実上困難です。

しかしですよ。15年前に建築基準法の確認申請を受け、住宅金融公庫の審査に合格したはずの私の家が……実は、現在では建築基準法に適合しないのです。筋交いの配置と補強金物の基準が当時と今は違うからです。日本にはたくさん学者がいて、研究機関があって、あれだけ厳しい審査をしていたのに……一体どういうことなのでしょう。たった15年ですよ!!

その程度の法律を金科玉条の如く守ることがそんなに大切なことなのでしょうか。それより、1000年は大袈裟でも、100年単位で守ってきた工法や町並みこそもっと尊重してもいいのではないか。私はそう思います。

日本で長く愛され残されてきた建物はほとんどが木造です。しかし、建築基準法も消防法も「木造嫌い」だとしか思えません。このままでは、法律に木造文化は殺される。本当に心配です。ただ、私が古民家再生をさせてもらう場合は、歴史を経てきた古民家の良さを最大限に生かす設計をさせてもらっています。
執筆:菅野