長期優良住宅対応!木造住宅の構造計算 〜もうひとつの重要な計算〜


    
―長期優良住宅に必要な構造の性能

    「長期優良住宅」として認めてもらうためには、住宅性能表示制度の「等級2」が必要であり、前回は

    「等級2」を満たすための「壁量計算」の方法をご紹介しました。

    しかし、壁量計算だけでは十分ではありません。耐震壁の配置にも関わる重要な項目、それは……

    「水平剛性」の検討です。


    ―地震力や風圧力を耐力壁に確実に伝える「水平剛性」

    「水平剛性」とは、平たくいえば床面・屋根面の歪みにくさです。耐力壁が柱と梁の直角を守るのと

    同じように、梁と梁の直角を守る性能が、床面や屋根面に求められます。

    水平剛性が低いと、配置された耐震壁がバラバラに働き、力が偏ったり、建物がねじれてしまったり

    する可能性が高くなります。

    ですので、各所の耐力壁が、一丸となって地震に立ち向かってくれるように、一体化を図ります。

    ここでは、長期優良住宅に必要な「等級2」を満たすための水平剛性の検討方法をご紹介します。


    ―水平剛性の検討方法

    性能表示制度に基づく水平剛性の検討は、まず床面を耐力壁線で区切り、各区間の幅に応じて

    「必要床倍率」を求め、「存在床倍率」が必要床倍率以上であることを確認します。

    「床倍率」とは、壁倍率と同じように、床面の歪みにくさを指標化したものです。

    次のように計算します。


    @ 耐力壁線を求めます。耐力壁線とは、耐力壁の長さ(壁倍率を掛けたもの)の合計が、外壁から

      外壁までの距離(建物全体の長さ)の60%以上、かつ4m以上となるような、耐力壁を含むラインの

      ことです。例えば、全長10mの外壁があり、4.5cm×9cmの筋交い壁(壁倍率2.0)が3mあれば、

      3×2.0=6mは10mの60%ですので、耐力壁線とみなすことができます。
   

    A 耐力壁線間距離が8m(12m)以内であることを確認します。お隣の耐力壁線との距離が、

      8m(12m)を超えていないことを確認します。

    B 各部分の必要床倍率を計算します。水平剛性は、耐力壁線で挟まれた部分ごとに検討します。

      それぞれの部分で必要な床倍率を、耐力壁線の配置条件や耐力壁線間距離に応じて算出します。

      配置条件による係数αは、表1のように定められています。

      地震力に対する必要床倍率=α×耐力壁線間距離×単位面積当り必要壁量÷200

      風圧力に対する必要床倍率=α×耐力壁線間距離÷壁線方向距離×表2の係数

      単位面積当り必要壁量というのは、前回ご紹介した壁量計算で、床面積に掛ける係数です。

      必要床倍率は、地震力・風圧力に対するもののうち、大きい方となります。

      耐力壁線間距離が遠くなるほど、必要床倍率が大きくなります。






      C 存在床倍率>必要床倍率を確認します。存在床倍率は、各面の仕様ごとに定められています。

        「5寸勾配以下の屋根で垂木の間隔が500mm以下、杉板9mm以上で釘の間隔が150mm以下」

        ならば、「0.2」倍、「9cm角の木製火打梁を5uに一個以下の割合で入れ、梁背が150以上」なら、

        「0.18」倍、という具合です。

        倍率は足し合わせることができるので、前記の屋根と火打梁があれば、0.2+0.18=0.38倍が

        存在床倍率となります。




     以上が、床倍率の検討方法です。なぜ、「耐力壁の配置にも関わる重要な項目」なのかと言いますと、

     特別な金物や工法を用いる場合でなければ、「存在床倍率」を高めることが困難だからです。

     例えば、耐力壁線間距離が3〜4m(2間程度)だったとしても、配置条件などが悪ければ必要床倍率

     は2倍以上になってしまいます。

     それに対して、「床倍率2.0」を単独で達成できる床面仕様は、根太を落し込んだ上で構造用合板を

     貼ったものくらいで、Cで例を挙げたような通常の屋根面などでは、とても達成することができません。

     ですから、耐力壁をうまく配置することで耐力壁線をコントロールする必要があるのです。


     ―長期優良住宅の認定を受けるためのその他の条件

     これで、長期優良住宅に必要な「等級2」の条件は、概ねクリアしました。

     この他の構造に関するチェック項目として、以下のようなものがあります。

     ● 接合部のチェック

       柱・梁の接合部には、耐力壁の倍率に応じた耐力のある金物を取り付ける必要がありますし、

       梁同士の接合も、床倍率に応じた仕様の接合としなければいけません。

     ●基礎のチェック

      基礎は、平面形状や地盤耐力に応じて、定められた寸法・配筋とします。

     ●横架材(梁)のチェック

      屋根や床の重さ、使用する材料に応じて、梁のサイズが指定寸法を満たすようにします。


     ―長期優良住宅だから安心……本当ですか?

     長期優良住宅の認定を受けるためには、このように厳しい基準を全てクリアしなければなりませんから、

     大変優秀な住宅たちが誕生することが期待されます。

     しかし、長期優良住宅や住宅性能表示の条件を満たしたからといって、必ずしも安全とは言い切れません。

     建物は千差万別で、全てを網羅する指標をつくるのは、困難なことでしょう。

     実際、複雑な平面形状や、複雑な屋根形状を持つ建物などでは、これらの指針以上に注意するべき点も

     多いかと思います。「国家のお墨付き」というブランドや優遇措置に振り回されることなく、真に「優良な」

     住宅を、賢く手に入れましょう。



........................................................................................................................................................................................................
菅野企画設計宅TOP