2009年を振り返る (岐阜市内の古民家再生)


菅野良司

孕石順昭

東松泰志

野村建太

長井真美

武田亜紀子
 
小栗未麻
 
谷本太一
 
池田大樹

倉本真衣
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   ■本来住宅は、住み継がれていくべきもの

   ■やはり本物は違う

 
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本来住宅は、住み継がれていくべきもの


岐阜市内の古民家再生の写真


2階 物置
   菅「このフリートーキングの前に、2009年で印象に残った建物は何ですか?というアンケートをスタッフ全員

     に配って、コメントを書いてもらいました。その結果、岐阜市内の古民家再生に多くのコメントが寄せられ

     ました。担当した野村君、工事の内容を少し解説してください」

   
「代々続いてきた庄屋さんのお宅を古民家再生させていただきました」

   
「築何年くらいの住宅ですか」

   
「築100年以上・・・お客様は120年くらい経っているとおっしゃっていました。広大な敷地の中に建つ

     約102坪の大きなお宅でした。建物自体は民家独特の造りで、田の字型の間取りに田の字がさらに

     続いたような・・・貴人口という特別な玄関もあるくらい格の高い邸宅でした。ご主人の希望は、土壁

     と瓦葺きの古い建物が持つ良さを残しつつ現代風にアレンジしてほしいということだったので、その

     意図をもって設計させてもらいました」


再生前の外観


   
「お客様は今まで、鉄筋コンクリート造の近代的な家に住んでみえたんですが、子供を育て終えて、

     そろそろ自分たちものんびり暮らしたいと思われた。その時ご主人は、これから暮らすのは今の家

     じゃないなと。近代的な家じゃなくて・・・実家が古いまま残っているので、そこを改築してプラスαの

     生活をしよう。今までは無駄だらけに見えた家だけど、その無駄が大切なのではいかと思えてきたと。

     いいお話だと思ったんだけど、家族の方がちょっとね(笑)・・・最初は同意されなかったようでした、

     特に奥様がね。こんなに便利で快適に住んでいるのに、どうしてわざわざ田舎へ行くんですかと。

     正直、最初はご夫婦がぎくしゃくしていて、スムーズじゃなかった。それで、ご家族が賛同していない

     仕事は受けることができませんと、お断りの手紙を出したんですよ。ところがしばらくして、ご主人から

     どうしてもあなたに設計してほしいと頼まれた。そこまで言われたらねえ(笑)。設計士冥利に尽きる話

     だと思い直して、設計を始めました。ただ、お客様自身、大変迷っていらっしゃいましたよね。古い家を

     昔の姿に戻しても仕方がないんじゃないか?そんなことをしたら、自分はいいけど次の代でまた空き屋

     になってしまうんじゃないか?ずっと自問自答されているように思えました。私たちなりに色々アドバイス

     もしてひとつの形になったんですが・・・完成間際になってやっと“お願いしてよかったと思います。

     私は大変満足しております”と、喜んでくださったんですよね。実は私も内心ヒヤヒヤしていたんですが・・・

     野村君も現場に行きたくない雰囲気の時もあったけど」

   
「いえ、そんなことはないですよ(笑)」

   
「ご主人が何を言い出すのかが予想できなくて・・・ただ、完成を喜んでくださったので私たちも本当に

     嬉しかった」

   
「私も設計に関わりましたが・・・菅野さんが打ち合わせをしてくる内容が、ちょっと意外な事が多かったので、

     えっ本当!と思って(笑)」

   
「普通の古民家再生は壁を漆喰塗りに仕上げるのが普通だけど・・・」

   
「外壁は全面タイル貼りにするとか。室内は大理石貼りにするとか。それに、選ばれるものが結構個性的

     で(笑)、びっくりする事が多かったんですけど・・・実際できてみると、ユニークで感じがいいなと思います。

     奥様は洋風な雰囲気がお好きだということで、寝室はモールを使った部屋にしたいと。古民家再生なので

     天井が普通よりも低い、確か2.3mぐらいでしたか?部分的に。この部屋にモールを使ったら大げさな

     デザインになるのではないかと思っていたんですが・・・実際できてみると、逆に可愛らしい雰囲気なった

     かなと感じました」


大理石貼の部屋


モールを使った部屋


   
「私は設計に関わらなかったんですが、先ほど菅野さんが説明したように、途中で一時中断して、

     また進んで・・・設計図はできたけれどお客様の予算と合わなくて仕様を大々的に変更したり、すごく

     苦労していたのを横で見ていました。実際に現場を見に行ったのはジャッキアップした時ですが、

     本格的な古民家再生をやっているんだなあと。全面的に土壁を落として・・・柱や差し鴨居も太いし、

     小屋組もしっかりしているから、これは十分残す価値がある住宅だと思いました。それから、古民家再生

     も今の時代にあった、これからの人がちゃんと住んでいけるような家にしなくちゃいけないという考え方は

     大切だと思いました。本来住宅は、住み継がれていくべきものだと思いますんで、それが実現した、

     非常に貴重な古民家再生だと思いました。外壁のタイルはすごく印象的だったし、ステレス製の破風板も

     思いもよらない使い方でビックリしましたけど、外観を見た感じでは、すごく合っているなあと」


土壁をおとした様子

太陽光に反射するステンレス製破風板
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やはり本物は違う

   
「倉本君はどんな感じを持ちましたか?」

   
「私にとって初めて見学した古民家再生だったんですが、イメージと違って、現代的な要素が交じった

     ようなデザインになっていたので、とても印象的でした。塗り壁を再生するとか、そういう工事を想像して

     いたんですが、インテリアに大理石を用いたり、外壁はタイル貼りで仕上げられていたり・・・驚きが

     いっぱいの空間でした」

   
「武田君は?」

   
「そうですねえ、古民家再生というと、以前設計を担当した東海市のK邸とか、長井さんが担当した

     岐阜市のN邸とか、瀬戸市のI邸とか、ああいう本当に古民家という住宅をイメージしがちですよね。

     でも、この古民家再生はどうも様子が違うので、最初話が来た時は、ちょっとびっくりして、どうなるの

     かなあと思っていたんです。工事途中で見学した時、新築では決して表現できないような、古いものと

     新しいものが交じって、アンティークな雰囲気もうまく出ていて、こういうデザインも素敵だなと思いました」



K邸


N邸


I邸
   「谷本君は?」

   
「玄関のあのシャンデリア!和風の家に本当にマッチするのかなあと思ったんですけど・・・

     完成したら、それはそれで斬新だなあと。とても印象に残っています」


シャンデリアがある玄関



   「実は、あれはご主人の趣味で(笑)。自分でお買いになったシャンデリアが次から次と現場に運び

     込まれてきた」

   
「あのシャンデリアには裏話があって・・・全部輸入品なんですが、パーツが全部バラバラで箱に入っていた。

     仕方がないので、電気屋さんが一日かけて組み立てたんですよ。一つづつ(笑)」

   
「ただご主人は偽物を決して買ってこない。ベネチアンガラスだとかボヘミアンガラスだとか、ちゃんとそれ

     なりのものを買われる。やはり本物は違う。いい加減なものなら、取りつけた時にちゃちいと思うけど、

     重量感が全然違った。だからいい意味で、谷本君の印象に残ったんだと思う」

   
「ちなみにお値段はいくらぐらいするんですか?」

   
「値段は聞いてないけど、安くはないでしょうね(笑)」

   
「お客様が本物志向で、再生する住宅も大変質がよかったので、工事をお願いする工務店はこちらから

     推薦しました。お客様ご夫婦を工務店へお連れし、本社や工場を見てもらい、社長さんと一緒に会食をして

     もらいました。私たちは設計士なので、設計図は描くけど自分で工事ができるわけではない。施工が悪けれ

     ば、いいデザインをしても絵に描いた餅になりかねない。やはり信用できる工務店をパートナーとして持って

     いて、適材適所に使っていくという事も大切ですよね。そういう意味では、今回は成功したなと思うけど」

   
「そうですね。特にジャッキアップした建物をゆっくり下ろした時に、全ての土台と柱がピタッと納まった。

     あの瞬間、ご主人は感動されていましたよね。あの瞬間で一気に信頼を得た気がしました。私が一番

     印象的だったのは、引き渡しの時“今まで3軒ほど家を建ててきた中で、今回が一番満足しました”と、

     言ってくださったことですね」

   
「“君たちの技術力はたいしたもんだ”とも褒めてくださった。非常にありがたい言葉でしたね」

   
「今、東松さんが住宅の設計を担当している名古屋市のO様もそうみたいですが・・・ご主人は、よくこんな

     ところまで目が行き届くなあと感心するくらい細かい事を言われますし、要望も細部に渡ったんですけど・・・

     それに対して私も現場監督も職人さんも、みんなが前向きに全力で対応していった、その態度をお客様

     が印象よく受け入れてくださいました。例えば外壁に採用したタイルのコーナー部分ですね。こんな出来

     栄えは見苦しい、この施工方法を標準として平気でいるのは怠慢だとメーカーを叱った。もし、大手メーカー

     ならそれまででしょうが、手作りが得意なメーカーだったので、社長自らお客様の意見を聞いて要望に

     かなうタイルを作ってきた。これにはご主人も納得して、追加金額を払われた。非常に面白い経験をさせて

     もらったなあと思っています」




タイルのコーナー部分



当初のコーナー役物
(一般的な納まり方)

御指摘後、変更されたコーナー
役物タイル

   「菅野企画設計は普段から真面目に建物を造っているから・・・現場でサポートしてくれる人たちが

     素晴らしい。本当に感謝しています。工業製品を使った設計ばかりしている事務所では、きっとこの

     古民家再生は実現しなかったと思う。お客様に苦情を言われて試作してくるようなタイル屋さんは

     本当に貴重だよね。追加のお金を貰えるかどうかもわからないのに・・・“よしやってやろうじゃないの”

     という心意気がうれしい。いろいろな意味で大変いい仕事に恵まれたと思います」




和室

キッチン

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