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| 2009年を振り返る2 (岐阜県多治見市 虎渓山 永保寺本堂・大玄関) |

菅野良司 |
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孕石順昭 |
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野村建太 |
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小栗未麻 |
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池田大樹 |
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倉本真衣 |
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もう少し設計士の役割をわかって欲しい
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池「桧皮葺きの最中と、小屋組ができたくらいの時に見に行きました。桧皮葺きのような普段見られない
工事はすごく面白かったですし、小屋組は野村さんに説明をしてもらったんですけれど・・・桁に大きな
荷重がかからないように工夫したとか、点検用にキャットウォークを造ったとか、伝統工法だけじゃなく
ていろいろ考えて設計しているんだということが印象に残りました」
野「伝統的工法を採用するだけじゃなくて、構造的弱点になるような部分を改良したのが、永保寺の特徴
でもあるので」
菅「まあその辺が菅野企画設計の真骨頂だね(笑)」
倉「話を聞いてイメージはしていたんですが・・・本堂の大きさは圧巻で、印象的でした。土壁も実際に見ると、
すごい迫力がありました。丁寧に作業をしている職人さんを見ることも普段なかなか経験できないので・・・
伝統的な建築は職人さんが支えている部分がすごく大きいんだなと感じました」
菅「そうだね。伝統的な建物を見ると、素材的なこととか、伝統的な技術ということにどうしても目がいく
んだけれど・・・実は、構造的な面でも合理的に考えて設計しているというのが大事なことで・・・
そうですよね?孕石さん」
孕「(笑)木造の場合、構造担当は設計が終わると自分の手から離れてしまって・・・あとは意匠設計や
大工さんの手に委ねられるので。あまり強いこだわりがなくなってしまうんですよね、実は。2日前に
野村君と一緒に永保寺の現場を見に行って、本堂の桧皮葺き屋根の棟まで、56歳の私がもう必死の
思いで一番上まで登りました。桧皮が葺いてある面を見ていると、本当に細かい仕事で、屋根そのものが
伝統工芸品という感じで素晴らしいなと思いました。それから、上から屋根の稜線を見ていると、非常に
微妙な曲線でてりが出来ている。むくりがあっててりがあるという、その微妙なところがよく分かる。
これはありがたい経験をしたなと。もうこれで、一生こんなことはないだろうと思いましたよ」
菅「わかりませんよ、これから引っ張りだこになるかもしれない(笑)」
孕「いや、すごいところまで登ったなということですよ。瓦屋根と違って桧皮というのはすごく優しい感触
だなあと。登った感じもすごく優しいので、あまり恐怖感が無いんですよ。素屋根がかかってるせいも
あるかもしれませんが・・・非常に感動しました」
菅「小栗君は?多治見は君の地元ですよね?」
小「何といっても、桧皮葺きの重ね葺きの厚さですね、軒付けの厚みが30センチくらいあるのに衝撃を
受けました。それから、竹釘ですが、日本でたった一組の老夫婦が一個ずつ作っていて、小さな釘なのに
非常に高価で・・・という話が印象的でした。これは今年のことではないんですけれど、庫裡の構造見学会
に来たおじいちゃんやおばあちゃんが“みんなの力、みんなの力”と言っていたのが印象的でした」
菅「そうですね。伝統的な建物を見ると、関わった一人一人の情熱が形になっていくのをつくづく感じますね。
工業製品ではないから・・・。造り手にしても、みんながそれぞれ培ってきた技をそこで生かしていると。
私自身も、今回幸運にも本堂の懸魚の図柄を描いたり欄間透かし彫りの下図を描いたり・・・本当に
素晴らしい経験をさせてもらっています。老師さんがやってみろと言ってくださったので、今まで培ってきた
ことの集大成をさせてもらっている。そして、その図に基づいて職人さんが腕を振るう。本当に手造り、
一つとして既製品がない。こういう現場は怖さもあるけどね。完成した時に、本当にいい建物になる
だろうか?という心配は付きまとうけど、やはりみんなで造ったという気がしますよね。私も大変幸せな
経験をさせてもらっていると思います」
野「ひとつ言わせて欲しいんですが・・・職人の技とか、伝統的な技に当然注目がいくのはわかるし、建物は
もちろん職人の技の集大成ではあるんですけど・・・もう少し設計士の役割をわかって欲しい。現場では、
旗振り役が必ず必要で、その役割が設計士なんです。永保寺には八野明さんという棟梁がいて大事な
仕事をするんですが、工事を請け負っている中島工務店の監督も大きな役割を担っていますし。でも
結局、現場の最終決定には設計士が責任を負うことになるんです。棟梁も監督も“設計士さん、ここは
どうしますか?”と聞いてくるので、決断を下さないと現場が進まない。大きな責任が肩に乗っている気が
しますが、実はそれが大事で、そういう役割をこなして初めて、現場がうまくいくのかなあと私は思います」
菅「そうだね。例えば、重源というお坊さんが東大寺を造ったとか、小堀遠州が桂離宮を造ったとか言われ
ているけど、彼らが実際鑿を持ったわけじゃないよね。プロデュース、デザイン、現場で指示をしたんだ。
ところが最近は、木工を担当する大工さんだけに過大な焦点が当てられる傾向がある。いつからそう
なったんだろう。設計士の役割をもう少し世の中の人が認めてくれるとうれしいなあとは思います。・・・
でも、まあそんなことより、完成した建物がみんなに愛されることが一番なんだよ。誰が造ったなんて
どうでもいいじゃないの、これは永保寺の老師さんから教わりました(笑)」
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