虎渓山 永保寺再建本堂
 
2010年3月


現在、本堂と大玄関を再建中の多治見市虎渓山永保寺で

3月14、15日の両日、一般市民を対象にした現場見学会が

行なわれました。            

永保寺は、開山堂と観音堂が国宝に指定されており、年に一度、

一般開放されます。今回の現場見学会はこの日程に合わせて

企画されました。「せっかくやるなら、できるだけ多くの市民の

皆さんに集まってもらいましょうよ」は、永保寺塔頭保壽院の住職

と土屋さん。その掛け声に応え・・・

施工を担当している中島工務店の現場監督、栗原さんを中心に

工事現場の職方がアイデアを寄せ合い、魅力的なイベントが繰り

広げられました。            

工事中の本堂の中では、木工事を担当している八野大工の宮

大工が台鉋、槍鉋の実演と彫刻の実演を しました。

また、このイベントのために永保寺で使われた仕口、継手の模型を

作って展示、棟梁が丁寧に説明しました。

桧皮葺きを担当している田中社寺は、葺き師が桧皮の“こしらえ”

を実演し、見学者には竹釘を使った桧皮葺きを実体験してもらい

ました。            

また、桧皮葺きの屋根の模型を作り展示したので、見学者は間近

で見て触って・・・とても興味深そうでした。







  瓦工事を担当している伏見窯業は瓦土を用意し、石膏型を使った

軒巴の型抜きを見学者に実体験してもらいました。

また、永保寺本堂に乗せる鬼瓦を展示しましたが・・・その大きさ

にほとんどの人が唖然。            

そして、菅野企画設計はセンターテーブルで「設計士と伝統を塗り

絵しよう」と銘打って、永保寺全伽藍の立面図や懸魚、彫刻の図柄

を用意し、色鉛筆で塗り絵をしてもらいました。のはずでしたが・・・

その伝統的な図柄に興味を持つ方が「わたしにもください」が続出

で・・・            

大量の枚数を増刷。担当の小栗と倉本はうれしい悲鳴をあげ

ました。

 




私と野村は伽藍の構造の説明にあたりました。

説明をするたびに黒山の人だかりができ、熱心に耳を傾けて

くれました。

ついつい説明にも熱が入り、声がからからになってしまいました

が・・・

「日本建築はまだまだ人気がある、魅力を感じていただける

のだ!」そう思うと、自分の仕事に誇りを感じると同時に、

とても幸せな気持ちになりました。

お寺の発表によると、二日間の人出は2500人に及んだそうです。

これからも、現場の力を結集して、皆さんの期待を上回る伽藍を

完成しよう!と、決意を新たにしました。




 
6月


永保寺で使用する襖の製作過程を見学しました。

襖はいっけん単純な建具のように見えますが、大変複雑な工程を

踏んで出来上がる建具です。

最近使用されている襖は外材をタッカーで留め付けて下地とし、

それをボール紙で固めただけのかなり単純な作りなのですが、

本物の襖はそんな単純なものではありません。

本物の襖は、 杉材で格子状に骨組みを作り、その上に7回に

渡って和紙を重ね貼りしていくのです。

そして、最後に漆塗りの枠材にはめ込むという、大変な手間と

技術が必要になってきます。

左が一般的な襖。
右が本来の襖。








 
下地の骨からして違います。

手間と時間、さらには費用がかかるものは現代の生活には

マッチしないということで、排除されるのが世の常でして、襖に

いたっても前述したような単純な作りの襖が量産されるように

なってしまい、逆に本物の襖を製作できるような職人が少なく

なってしまいました。              

今回襖の製作をしていただけるのは下呂市で表具屋を経営して

いる長村(オサムラ)さんで、物腰の柔らかな人当たりの良い方

です。              

今回は下地材となる襖骨の確認と、下貼りの実演を見させて

いただきました。襖骨の下地は杉の白太を使います。              

なぜかといいますと杉の白太はアクがでないからです。


アクがでると長い年月で表面に骨のシルエットが出てきて

しまいます。それを防止するため設計段階から下地の杉材には

源平が混じらない白太を指定しています。              

和紙を貼る工程は、7編貼りといい下貼りを7回に渡って貼って

いくのですが、今日見れたのは蓑貼りと いうむくりを出す工程。

尺幅くらいの和紙を重ね代を作って貼っていきます。

全面に糊をつけるのではなく、端だけに糊をつけていきます。

そしてこの状態でまたしばらく寝かせておくそうです。

一気に仕事をしてしまうと建具がそってしまったりするので少し

づつ工程を踏んで環境になじむようにしているそうです。

手間がかかるうえ気の長くなる工程ゆえ、襖がいかに高価な

ものなのかがつくづく判りました。            

この細部まで行き渡った手間と配慮によって出来上がる襖の

技術は、日本の職人が織り成す和の真骨頂であります。

是非、和風の建築には少し奮発して取り入れていただきたい

技術です。





 
9月


永保寺本堂の再建工事は大変順調に進んでいます。

そして、遂に足場が外れました。              

いままでは足場があったため建物の状態を近くからしか

確認できず、全体のイメージを把握しきれませんでした。

工事が始まってからの1年半、その全貌が見られるのを

心待ちにしていたのですが、やっと足場が外れ、その姿が

あらわれました。



  軒反りなど図面上ではイメージして設計ができても、果たし

てその設計が、イメージ通りにできているのかとても心配でした。

間近でみているスケール感と、全体でみるスケール感には

大きな隔たりがありますが、全体を見廻してもイメージ以上に

良い出来上がりだと思います。             

桧皮屋根が独特の存在感をかもし出しているのも影響していると

思いますが、本堂の屋根ラインも美しく、唐破風も滑らかに納まり、

とりあえずは満足のいく出来栄えではないかと思います。

原寸図を前にみんなで知恵を出し合って後世に残る良いものを

創るんだという意気込みで “ああでもないこうでもない“と、

取り組んだ結果が表れたのだと思います。              

本当にちょっとしたラインの違いが全体に大きな影響を与えます。

工事に関わるみんなが、これだ!と満足できるラインは、なかな

ありません。              

何もこだわらず適当に済ますこともできますが、それでは感動する

建物はできません。              

設計士は“これだ”と思う図面を書いても、大工さんが原寸を起こす

と、“ちょっとこうしたらどうだ?”という意見があったりと、なかなか

一つのことを決めるにも一筋縄ではいきません。

当然設計士には大きな権限はありますが、みんなが納得して

くれないといけないので大きなプレッシャーが生まれます。

けれど、そういう緊張感によって生まれるラインはとても納得の

行くものになります。

あとは、浜縁が出来ればいっそうバランスが保たれ見栄えが

良くなるだろうと思います。 次は仮囲いが外れるのが楽しみです。
 







 
 
 


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