◆古民家再生をしようと思う動機◆
- 菅野(以下菅)
- 「お客様は、どんな動機で古民家再生をしようと思うんだろう?具体的に聞かせてください。」
- 野村(以下野)
- 「岐阜市のA様は、ご先祖が残したもの、想いを引き継ぎたいということだったのかなと。ご主人も奥様も、古民家の風合いが好きだということではなくて……古民家再生に踏み切った動機は違うところにあったような気がするんです。ご先祖が一生懸命建て、残した屋敷を、なんとかして伝えていこう。そういう強い意志を感じました。」

▲ポーチ柱の根元が腐って、短くなったため、屋根が垂れ下がっていた。 - 菅
- 「あの家は築何年くらい経っているの?」
- 野
- 「100年以上です。」
- 菅
- 「長い間庄屋さんだった?」
- 野
- 「そう聞いています。面積も非常に大きくて、120坪あります。」
- 菅
- 「貴人口もあるよねえ?ご主人はあの家で育ったということだけど、それより、自分の先祖が代々あそこで生活をしてきた、その歴史を残していきたい。そんな想いも確かに感じた。」
- 長井(以下長)
- 「私が担当した瀬戸市のI邸も、大工だったおじいさんが建てた家を残したいという想いを強く感じました。それから、若奥様が、古民家調のデザインや歴史を刻んだ色とかがすごく好きで……家族皆さんがこの家を残そうという気持ちで一致していました。」
- 菅
- 「あのお宅の場合は、30年ぐらい年前に、お父様が住宅の一部を現代的にリフォームされていたんだよね?ところが、その部分を壊して古民家風にリフォームしてしまった(笑)。つまり、古いまま残っていた家の半分に合わせて全体をリフォームしたというやり方だったね。」
- 長
- 「そうです。」
- 菅
- 「岐阜市のN邸は?」
- 長
- 「N邸は、うなぎの寝床のような細長い町屋※1で……一番奥の倉庫が中庭に面して明るい場所※2だったので、そこをダイニングキッチンと水廻りにリフォームしました。あの当りは、古い町並みが大切にされている地域なので、自然に、古い建物を生かして……という発想になったのかなと思いました。」
- 菅
- 「お客様も、間取り的にはとても住みにくい家ですと言ってみえたけれども、あの雰囲気は気に入っていらっしゃる。だから、古い構造材を活用するという提案を大歓迎してくださった。」
- 武田(以下武)
- 「東海市のK邸は、お客様が第一に、耐震性能に対する不安を持ってみえました。実際に調査してみたら……予想以上に痛みが激しくて、家も北側に相当傾いている状態※3でした。だから、先ず何より安全に住めるようにとして欲しいと。それから、ご両親がご高齢で、病気勝ちだという事情もあったので、現在の間取りをあまり変えずに、しかも体に負担をかけないような家にリフォームしたいと……相談にみえた娘さん夫婦は、和風や古民家のデザインがすごくお好きで、今の雰囲気をそのまま生かしてリフォームしたいと希望されました。」
◆古民家の魅力◆
- 菅
- 「ホームページの古民家再生の表紙には「古民家は宝物です」と書いてあるけど(笑)……君たちは歴史を刻んだ建物が好きだといつも言っているよねえ?古民家を見て、どういうところに魅力を感じるの?」
- 野
- 「調査に行った時、最初に気になるのは、差鴨居(さしかもい)※4が使ってあるのかどうかということです。差鴨居が使ってあれば狂いも少なく、いい状態が保たれている場合が多いので……その強さには魅力を感じます。それから、ケヤキの大黒柱とか、今ではなかなか見られない、くねくねした松丸太の小屋組みとか……昔の人は、手に入る木材を色々な技術を駆使して造ったんだなあと……そういう仕事の技に私は魅力を感じます。」
- 長
- 「古民家を見に行くと、使ってある木材が大きくて……しっかり頑丈な感じを受けます。昔の人は材料を大切にして、くねくねした木材でも、手間をかけて組み上げている※5。そういうのを見ると、すごいなぁ!って感心してしまいます。それから、木材同士の継手(つぎて)や仕口(しぐち)に、込み栓とか鼻栓がしてあるのを見ると、ちょっと嬉しくなりますね(笑)」
- 武
- 「私も、使ってある木材の大きさや構造に魅力を感じるのはもちろんなんですけど、歴史を重ねてきた色※6に……新しくては絶対出せないものなので、すごく魅力を感じます。それから、和室の天井板に無垢材が使ってあったり……今だったらすごく高価につくことが、昔は当たり前だったんですよね。」
- 菅
- 「ハウスメーカーの家は、結局合板だらけですよね。本当は、古民家のように本物を使いたいけど、お金がかかるしメンテナンスに困るから合板にする……なんか偽物文化がどんどん広がっている気がする。だから、古民家を調査すると、ああ本物だ!と安心するし、本物に触れた喜びを感じますよね。私たちが古民家と呼んでいる住宅は、築80年以上経っている・・・でも、100年以上の住宅にはなかなかお目にかかれないよねえ。実は、1891年、今から118年前に濃尾大震災が起きたんですね、この辺りに。この濃尾大震災は、マグニチュード8を超えていた・・・阪神大震災が7.2、関東大震災が7.9なので、近年では日本で一番大きな地震だった。その地震がこの辺りを襲って、壊滅的な被害を与えたわけですよ。だから、その地震の後に建ったものしか残ってないんじゃないかと僕は思ってるんですよ。・・・地震の後に建てた家は、多分近くに生えている樹を切ったり、手に入る木材を、大切に使ったと思うんですよ。今みたいに製材された材木がふんだんにある時代じゃないからねえ。曲がった木でも、古材でも大切に使おうと……そういう意味では、手間よりも材料を大事にしているということでしょう。その辺りが今の価値観とは全然違うし、逆にそれが魅力になっていると僕は思う。」






































