家づくりのノウハウ/フリートーキング
テーマ 「エクステリア」
参加者紹介
- 菅野良司
- 高い設計力、気さくなスタッフ育てています。
- 野村建太
- こだわって下さい!家はライフスタイルを表します。
- 長井真美
- 家族のたくさんの「想い」に応えたい。
- 田中有紀子
- よりお客様に満足していただける設計を。
- 武田亜紀子
- 「こんな家にしたい!」思いをたくさん聞かせて
- 小栗未麻
- こだわりと工夫がいっぱいの家づくりを。
- 菅野(以下菅)
- 「敷地の中に住宅をどのように配置するのか?先ず考えることを教えて下さい。」
- 武田(以下武)
- 「南側から光が入りやすいようにしたり、効率的に車が駐車できるような工夫をします。」
- 小栗(以下小)
- 「隣の建物とか、敷地の状況をよく観察して……場合によっては東側を庭にしてみたり……それから、下水道への排水経路も考えたりします。」
- 長井(以下長)
- 「私は、敷地の高低差にも結構配慮しています。」
- 田中(以下田)
- 「そうですね。高低差があると、アプローチ※1の階段とかを最初から考える必要があるので、その辺は気をつけています。でもやはり、配置計画で一番気を使うのは駐車場ですねえ。敷地に余裕があればいいんですが……南側に道路があると、車を駐車したうえに採光も取りたい※2とか……いろいろな工夫が必要になってきます。」
- 野村(以下野)
- 「住宅を設計する場合には先ず地域性を考えたいと思います。敷地の周辺をぐるぐる歩いてみて、この場所、この敷地にはこんな建物を、というイメージ作りをしたい。それから敷地の中の配置をまとめていく。地域性から配置計画へ考えを進めていく……僕はそういうスタンスです。」
- 菅
- 「具体的な話をしましょう。田中君が設計したW邸※3は見晴らしのいい田園地帯にポツンと土地があったでしょ。ああいう敷地はかえって設計しにくくなかった?」
- 田
- 「敷地の広さは充分あったんですけど、その割には南北方向が比較的狭かったんです。だから、できるだけ東西に細長い間取りにして、太陽の光をできるだけ取り込めるように、南側はなるべく空地にしようと考えました。駐車場やアプローチについては、敷地にかなり余裕があったので、ゆったりした駐車場、奥行きのあるアプローチというお客様のご希望を実現することができました。」
- 野
- 「僕も、設計ではすべての部屋を南向きにしようと意識するので、今の考え方にはたいへん共感できますね。」
- 菅
- 「それから、特に街中にある敷地の場合、風通しの問題もよく考えておきたいね。敷地の四周を塀で囲って、家は北側ぎりぎりに建ててくれと希望される方がいらっしゃるけれども、そういう建て方では風が抜けなくなってしまう。」
- 田
- 「N邸※4では北隣りの家が逆に南側ぎりぎりに建ててみえたので、お客様は自分の家の北側を低くして、隣の家の日当たりを確保してあげたいと。」
- 菅
- 「それは、これから隣同士だから仲良くしていきましょうという気持ちがよく出ている話だね。小栗君が設計したM邸※5は、両親の家が建っている敷地の中に若夫婦の家を造ったよね」
- 小
- 「そうです。両親の家と若夫婦の家に囲まれている庭を共用の庭、南側には若夫婦のプライベートな庭ができるような配置計画を考えました。共用の庭には……若夫婦の家の屋根に造った天体観測所へお父さんが上っていく階段もあるし……最近お子さんが生まれたばかりなんですけど、子供が遊ぶようになったら、どこからでも見られます。」
- 野
- 「でも、ひとつの敷地の中で親の家が隣にあるというのは……息子さん夫婦には、できるだけ親に干渉されたくないという気持ちもあるでしょう?」
- 小
- 「そうですねえ……でも、幸い敷地が二つの道路に接していたので、親夫婦の入口と別の入口を確保できました。」
- 野
- 「なるほど、うまく出入り口が分離できたわけ。」
- 小
- 「はい、ちゃんとそれぞれの駐車場も造ることができました。」
- 菅
- 「僕は、日本の家が道路に対してあまりにも無表情なのが気になっている。もう少し考えるべきだと思うのは駐車場。当たり前のように塀で囲ってしまうと、ただの駐車場になってしまう。そうじゃなくて、駐車場を道に面した開放エリアだと考えてみたらどうだろう。そして、家の中から監視できるような工夫をする。プライベートとパブリックの中間的なエリアが道のあちこちにできれば町並みも楽しくなるし、防犯にも役立つんじゃないか。」
- 長
- 「そうですね。今、新築工事が進行中のSさんは、以前複数のハウスメーカーでプランを作ってもらったそうですが……敷地は南側と西側の道路に面しているのに、出てきた案は南側に駐車場を二台分確保して塀で囲って、住宅は北側境界線いっぱいに配置するというプランばかりだったそうです。うちが提案したのは西側道路と建物の隙間が駐車場になっているようなプランです。駐車場と玄関、駐輪場が魅力的につながっていますし、小さな窓から様子が見える。逆に南側は充分広いプライベートな庭として使えます。」
- 菅
- 「次に、敷地形状とか近隣に特殊な状況があったけど、逆にそれを利用してしまったなんて話があれば教えてください。」
- 長
- 「I邸では敷地の東側に道路があったんですが……その道路の幅が1.8mしかなかったんです。それで建築基準法の道路斜線※6で高さ制限をうけて……普通の2階建てを建てるのが無理だと……で、その道路斜線に平行な急勾配の屋根にしました。そうしたら2階が屋根裏部屋みたいな感じになって、お客様には好評でした。」
- 菅
- 「あのお宅は、中年のご夫婦が自分たちのために造ったんだけど、完成したら……東京に行っていた息子さんが帰ってきて……その2階の部屋をのっとられたらしいよ(笑)」
- 武
- 「F邸※7は、南側の道路と敷地の高低差が2m以上ありました。そのおかげで、道路からの視線を気にしなくてもよかったんです。だから、南側に大きな窓をつけて、思いっきり明るい雰囲気のいい家になりました。」
- 田
- 「N邸※4は東道路だったんですけど……お客様が家相上、玄関は北側がいいとおっしゃって……その希望を叶えるようにプランを練っていったら、北側の路地風のアプローチを通って玄関へ行くという……結果的にはおもしろいプランになりました(笑)」
- 長
- 「名古屋のT邸※8の敷地は住宅が建てこんだ市街地で、面積もかなり狭かったんです。ご希望の広さの家を建てようとすると敷地いっぱいになってしまうし……南側が隣地。東側は道路に接していたんですけど、視線を遮るほどのスペースが取れませんでした。それで、家の真ん中に吹き抜けを造って、太陽の光が2階の窓から入ってくるようにしました。」
- 野
- 「光とか通風を立体的に解決したというわけですね。逆境が間取りをおもしろくした!」
- 長
- 「そうですね(笑)」
- 野
- 「外観を考える場合、どんなことを重要視しますか?」
- 菅
- 「先ず、周りに建っている家と調和したデザインにしたいと思う。でも、最近はハウスメーカーが地域色のない住宅をどんどん建てているので、魅力的な街並みや調和させたいと思えるような家に出会うことが少ないよね。」
- 田
- 「私は、お客様の好みを伺うのが先かなあ。こちらから提案するより前に、大まかな好みでもいいので聞かせてもらいます。」
- 菅
- 「設計士の中には、街並みの中に異質なものをポイッと投げ込むようなデザインをする人が多いよね。古い町並みの中に箱みたいな建物を挿入してみたり、違和感のある色をわざと使ってみたり。ああいう感覚ってどう思う?」
- 田
- 「Nさんは、周辺の家が日本瓦を葺いた切妻屋根ばかりなので、うちもそうしたいと……私もその考え方に共感しました。でも、自分の家の形しか考えていない人の方が多いんだろうなとは思いますね。」
- 菅
- 「ただ、菅野企画設計に設計を頼んでくださる方は、目立つ家にしてくださいとは希望されませんよね。多分ホームページを見て、そういうデザインをする事務所じゃないと感じて下さっているんだろうね。」
- 武
- 「外国へ行くと、地域らしさが出ている建物に出会うことが多いし……調和した町並みに魅力を感じます。日本で造るのならやっぱり、日本らしさを感じるような建物を設計したいなぁといつも思っています。もちろん、お客様の好みも生かしての上ですけど。」
- 菅
- 「以前、都市基盤整備公団に依頼された仕事で、住宅地開発の町並み計画を手がけたことがあるんだけど……道に対する家の向き、駐車場の位置などを工夫することで魅力的な町並みになるように考えた。一軒の外観だけじゃなくて、本当はそこまで掘り下げて工夫したいよね。」
- 菅
- 「日本の住宅地は、敷地が絶対的に狭いと思うんですよね。50坪とか60坪……いや都市部だと30坪くらいの土地に家を建てて住んでいるのが現状だもんねぇ」。まあ、それはさておき、道行く人の視線からプライバシーを守るアイデアを教えてください。」
- 長
- 「M邸では、食堂の窓が東の道路に面しているんですが……バスがよく通るんです。そのバスの窓の高さがちょうど部屋の窓の高さと同じくらいになってしまうと気付いて……オーニング窓※9にして和紙調ガラスをはめました。」
- 武
- 「お風呂の窓は一番気になるので、ガラスルーバーの窓※10にしたり、横滑りの窓にしたり……いつも気を使ってデザインしています。」
- 田
- 「お風呂については、窓の外にバスコート※11を造って壁を立てれば、光はふんだんに入るけど視線は隠すという効果があります。この方法は可児市のM邸で採用しました。」
- 菅
- 「大垣市のM邸は、建設予定地の南側に無愛想な2階建てのアパートができちゃって、しかも北側が開放廊下だった。この廊下からの視線を遮るために、南側の隣地境界線に沿って書斎を配置するコの字型プランを提案した。書斎の屋根は、リビングへの視線を遮る角度の片流れにしたんだけど、結果的にリビングと書斎で囲まれたスペースはとても快適な中庭になったと喜んでもらいました。」
- 菅
- 「配置、外観、見え方の工夫で、これは成功したなあと思う実例を教えてください。」
- 野
- 「みんな成功していないとだめなんですけど。(笑)」
- 田
- 「O邸は増築部分が平屋で、東西にかなり細長い間取りだったんですけど、ロフトのある部分とか、越し屋根で外観に変化を持たせることができました。ただ、交通量の多い道路が北側に接していたので小さい窓しかつけられなくて……壁が少し寂しい感じだったので、穴あきブロックで変化のある塀をデザインしてみました……結果として、うまくできたかなと思います。」
- 菅
- 「Oさんは、野村君が設計したW邸が気に入ってみえたんですよね?」
- 野
- 「春日井市のW邸※12は僕も気に入っていますよ。あのお宅は、坂道の途中にあるんですが、その道がW邸の近くで少し湾曲するんで、石垣の上に建っている姿がちょうど正面に見えるんです。その感じがとてもいい。」
- 菅
- 「山荘みたいだね。」
- 野
- 「山荘みたいですね(笑)。坂道側に窓とテラスがあるんですが、家からはオープンにしたいけれどプライバシーは確保したいということで、木製のフェンスで囲いました。屋根はシンプルな切り妻屋根、越し屋根がちょうどいい所に乗っていて……バランスよく、いい感じにできたと思っています。」
- 長
- 「知多のT邸※13は、塀のない庭から見る外観が気に入っています。」
- 菅
- 「あのお宅は、家の周りは自分で花を植えたいということだったんですか?」
- 長
- 「そうですね。道の境には、フェンスや塀はいらないと。」
- 菅
- 「それと屋根の形は、西側からの強い海風を意識したんでしょ?」
- 長
- 「はい、季節によっては海から吹いてくる西風がとても強くて……その風をまともに受け止めないように西側は片流れの屋根になっています。それから私は、各務原市のO邸の北側から見る外観も気に入っています……車庫がなかったらもっといいなと思いますけど(笑)」
- 野
- 「配置という点で、僕は箕面市のN邸※14が非常によくできたと思っているんですが。」
- 菅
- 「中庭を造ったお宅ですか?」
- 野
- 「ええ。中庭を造ったことで、絶大な効果を発揮していると思います。ちょっとした工夫なんですが……」
- 菅
- 「あのお宅のご主人は、どうも書斎から中庭が見えるのに憧れていたんだよね。中庭を提案した途端に目の色が変わったからね(笑)。これはいい!とか言って。ツボにはまったって感じだった。」
- 武
- 「F邸では、既設の建物を囲うように増築したんですけど……既設の建物はコンクリート造の無機質な箱のようなデザイン……色々考えて、増築部分には色の濃い木目調のサイディングを貼りました。その結果、無機質な表情がちょっと和らいで……結構成功したと思います。」
| ―街から見たときの資産価値 |
街並みへの調和は、建物の価値を高めることにもつながるかもしれません。
中古住宅の売買で、売却価格に大きく影響するのが外観だといいます。…(略)…そのため、室内はそのままでも外観だけ手を入れて、見栄えをよくしてから売りに出すこともあるといいます。そう考えると、街から見た価値というのも資産として評価する要素としては、かなり大きいといえますね(⇒長く暮らせる家づくり)。
周りの多くの人が、「いい」と感じてくれるような建物の価値が高いということは、納得できそうです。 |
| ―魅力的な町並みを考えて…… |
 |
※9 オーニング窓とは、横滑り出しの動きをする窓が縦に連続している窓。ハンドルを回して操作します。(⇒YKK AP)
※10 ガラスルーバー窓とは、細長いガラスが連続している窓。ハンドルを回すと、それぞれのガラスが回転して通風します。(⇒トステム)
※11 バスコートとは、バスルームとつながる中庭(コート)やテラスのことをいう。入浴時に眺めを楽しんだり、お風呂上りにはそこに出てくつろぐこともできる。(⇒イメージ検索「タグル」)
| ※12 春日井市のW邸 |
 |
| 石垣の上に建つ姿がとてもいい。 |
| ※13 知多のT邸 |
 |
| 庭にフェンスや塀がない。西側は海風を受けるため、片流れの屋根。 |
| ※14 箕面市のN邸 |
 |
| 中庭をつくるというちょっとした工夫で、上手く配置できた。書斎からは中庭が見える。 |
- 菅
- 「それでは、素材の話をしましょう。よく使う屋根材と、使い分ける観点を教えてください。例えばカラー鉄板やガルバリウム鋼板のような金属屋根※15と瓦を使い分ける観点は?」
- 田
- 「将来メンテナンスの必要がないということで……瓦を選ぶお客様は多いです。ガルバリウム鋼板は軽いし錆びることも少ないので、家の耐震性という点ではお薦めなんですけど……金属系の屋根はペンキの塗りなおしが必要だと思っているお客様が多いです。しかし瓦はフリーメンテナンスだと。」
- 菅
- 「ただ、瓦はガルバリウム鋼板などと比べると高くつく……とは言っても、最近は瓦もピンキリか!?(笑)例えば、T邸で使った平板瓦※16は、いぶし瓦※17の平板瓦だったけど、すごく高級感があったねぇ。」
- 長
- 「そうですね。やっぱり本物のいぶし瓦は、経年変化で色むらがでてきて味があります。そんな色むらは必要ないということなら、コストも安くてすむ陶器瓦※18を選ぶという手があります。それから、外観の色のコーディネートも大切ですよね。」
- 菅
- 「なるほど。ただ同じ瓦でも、最近ハウスメーカーや建て売り住宅の屋根に乗っている瓦は、ものすごく薄い気がするんだけど……」
- 長
- 「最近、サイディング※19みたいな瓦がありますよね。土を焼いた瓦に比べると軽いから家の耐震性が上がるということでアピールしてるようですけど……でも表面の塗料がはげてくる(笑)。そういう点では陶器瓦を使った方がいいと思いますね。」
- 野
- 「以前はカラーベストというのがあったじゃないですか。でも、アスベストが問題になって、新しい素材を開発したんじゃないですか。」
- 菅
- 「なるほど。」
- 野
- 「ハウスメーカーの家の屋根に乗っている瓦はどう考えても陶器瓦じゃない。セメント瓦じゃないですよね?」
- 菅
- 「いくらなんでも、そんな安物は使ってないでしょ?でも、陶器瓦にしては確かに薄すぎるよね。」
- 長
- 「実際手に持ってみると、陶器瓦とは全く重さが違いますよ。……耐震性を気にされている人にとっては、外見が瓦に見えるし、軽いから……これはいいなと思われるんでしょうね。」
- 菅
- 「結構高級といわれているハウスメーカーの家でもあの瓦?だよね。ペラペラの瓦……」
- 全員
- 「あぁー」
- 野
- 「それから、間取りと外観のデザインをしていくうちに、この屋根の勾配は緩くしたいということになった場合は、瓦じゃなくて金属屋根を選択することもありますね。」
- 菅
- 「瓦は、いくら工業製品とはいえ、土から成型するものだから、どうしてもいびつなところがあって、重ね部分から水が入る。そういう特性を考えると、屋根の勾配はとても大切で……菅野企画設計では勾配が4.5/10より緩くなったら金属屋根にすることにしています。・・・最近、(表面にアルミをメッキした)ガルバリウム鋼板を使うことが増えたけど……お客さんの反応はどうですかね?」
- 小
- 「(屋上に天体観測所を造られた)Mさん※20の評判はあまりよくなかったです。ペラペラで、屋根という感じがしないと奥さんは言われていました。」
- 菅
- 「じゃあ、どうしてガルバリウム鋼板を選択したの?」
- 小
- 「屋根の勾配が緩くしか取れなくて……。」
- 菅
- 「積極的に金属屋根を選んだわけじゃないの?」
- 小
- 「はい。同じ敷地に建っている母屋より棟を高くしちゃいけないうえに、室内の天井は斜め天井じゃなくてフラットにして欲しいということだったので……瓦が葺けるだけの屋根勾配が取れませんでした。」
- 菅
- 「金属屋根は軽いという利点があるけど、逆に台風に対してはどうかな?」
- 野
- 「最近は、ハゼの部分を機械で加工するので、問題ないと思いますよ。」
- 菅
- 「もともと建築基準法施工令には屋根葺き材の緊結の規定があったんだけど、最近は風圧や地震で脱落しないという強度計算まで役所が求めてくるようになったらしいねぇ。」
- 野
- 「そうです。瓦を止めるビスの数とか……接続に何を使うか?規定にあった製品かどうか調べて使っています。」
- 菅
- 「だから、瓦でも板金でも、心配いらないと。」
- 野
- 「そこまで考えているということです(笑)」
- 菅
- 「金属屋根を使うと、暑くないかとか雨音が気にならないか、と心配されるお客様がみえるけど、それについてはどうかね?」
- 長
- 「やっぱり瓦屋根の方が遮熱効果はあると思いますし、雨の音の問題も瓦の方が優れていると思いますけど……住宅の性能にこだわったNさんは、耐震性を優先して軽い金属屋根にしたいと言われました。」
- 菅
- 「鉄骨3階建てのY邸※21は、外観のデザインからシルバー色のガルバリウム鋼板平葺きを採用したけど……台風の時や大雨の時、屋根裏に音が響くと言われた。ただ、屋根に直接当たる雨音より、3階の屋根に落ちた雨が風で横に走って……妻側から2階や1階の屋根に落ちる雨の音が問題になった。あれだけ大きな金属屋根は、屋根形状や妻部分の納まりにも細心の注意が必要だと感じた。」
| ※15 金属屋根 |
| 金属の屋根葺き材には、様々な材種・形状があります。ガルバリウム鋼板は、今主流のメッキ鋼板です(下図)。金属屋根のメリットは、軽量で、屋根の勾配(傾き)をなだらかに出来ること等です。(⇒日本金属屋根協会) |

http://www.kinzoku-yane.or.jp/ |
※16 平板瓦とは、主に洋風住宅に用いられる起伏がない瓦で、比較的安価な製品が多い。和瓦等に比べて、雨水が浸入しやすいと言われる。(⇒製品例)
※17 いぶし瓦とは、代表的な瓦で、「いぶし」と呼ばれる燻化を行い、渋い銀色の光沢を持つ。焼成の最後の段階で燻化し、瓦の表面に炭素の微粉をつきさすように付着させたもの。(⇒三州瓦豆辞典)
※18 陶器瓦(釉薬瓦)とは、表面を釉薬で化粧した粘土瓦のこと。(⇒Wikipedia)
| ―いろいろな屋根 |
 |
| ▲金属瓦葺きの屋根。 |
 |
| ▲藁葺きの屋根。 |

http://www.nikkeibp.co.jp/sj/2/column/d/07/ |
| ▲緑の屋根。 |
※19 サイディングとは、乾式の板状の外装材の総称。工場で生産された製品が一般的で、耐火性や耐久性などに優れたものが多く販売されている。(⇒All About)
| ※20 天体観測所付き(!)M邸 |
 |
| 屋根勾配が緩いので、屋根葺き材には鋼板を採用。 |
| ※21 鉄骨3階建てのY邸 |
 |
| 外観デザインを考えたガルバリウム鋼板の屋根ですが、雨音が屋根裏に響くそうです……。 |
- 菅
- 「外壁材について話しましょう。どんな材料を使うことが多い?」
- 野
- 「やっぱりサイディング※19が一番多いですねぇ。」
- 菅
- 「窯業系のサイディングだね?金属系のサイディングも結構使うんじゃないの?以前から気になっているんだけど、金属系のサイディングを使う時、結露の問題はないんだろうか?」
- 武
- 「断熱材を裏貼りした製品がありますよ。コンクリート造のお宅をリフォームしたF邸では、断熱性能をアップするためにそういう製品(アイジー工業「ガルスパン」)を外壁に貼りました。」
- 菅
- 「断熱材を裏貼りしていない場合はどうなの?」
- 田
- 「裏に通気を取れるようにして……下地には透湿防水シート※22も貼るので、結露しても流れ落ちて建物を傷めません。」
- 野
- 「通気層を取るのは必要ですよね。」
- 田
- 「金属製サイディングの裏に入った水も通気層を通って、空気と同じように出て行くという考えです。」
- 菅
- 「窯業系のサイディングとガルバリウム鋼板のサイディング、どちらが高いの?」
- 田
- 「最近ガルバの方が高いんじゃないですか?」
- 武
- 「いえ、窯業系も高い製品がありますよ。光触媒で汚れないタイプ※23はすごく高いので……」
- 田
- 「私はスタンダードタイプの安い製品ばかり使っていますが(笑)」
- 武
- 「お客様によっては外壁の汚れが気になるみたいで……そんな外壁材があるのなら是非使ってくださいと。」
- 菅
- 「ちなみに光触媒タイプとスタンダードタイプのサイディングの値段の差は?」
- 武
- 「うーん、スタンダードのサイディングが4000円/m2くらいで、光触媒タイプが6000円/m2以上って感じかな。」
- 菅
- 「結局5割増しか?本当にそれだけの効果があるのかなあ……最近、メーカーがサイディングをどんどん厚くしているよね。多分、割れの問題だろうね。製品の質はどんどん向上しているんだろうけど……菅野企画設計では窯業系サイディングを採用する場合は原則として金物留めということにしています。今までの経験で、窯業系のサイディングを直接ビス留めすると割れる危険性がある。」
- 野
- 「和風の建物では、下地にデラクリートボード※24を張って塗り壁で仕上げることもあります。」
- 菅
- 「そういえば、中津川市に鉄骨造で和菓子屋さんを造った時、お店の希望で外壁には珪藻土を塗ることになったんだけど……下地は何がいいのか?迷って……デラクリートを採用した。ちょっと心配したけど、もう3年以上か?先日も店に寄ったけど全く割れはなかった。ただ、値段に問題ありか?」
- 野
- 「結構高くつきました。」
- 菅
- 「最近、目地がない外壁を好まれるお客様がいるよね。でも、不用意に目地のないデザインをすると将来割れの問題が生じる。できればデラクリートのような下地を採用したいけど、なかなか予算がついてこない。小面積の目地無しなら、下地をサイディングにして吹き付け仕上げだろうね。」
- 田
- 「W邸ではサイディング下地でアクリルリシン※25を吹き付けました。とても経済的でいい感じに仕上がりました。」
- 菅
- 「タイル仕上げ※26もよく採用するよね。下地に引っ掛けるタイプと接着剤で貼りつけるタイプはどうやって使いわけをしていますか?」
- 野
- 「揺れが大きい鉄骨造の建物、それから高いところに張る時は引っ掛けを採用したいですねえ。鉄筋コンクリート造なら貼り付けでもいいと思うんですけど。」
- 菅
- 「現在工事中のF邸は2階の外壁もタイル張りだよね。」
- 野
- 「はい。全部引っ掛けで設計してあります。」
- 菅
- 「最近では、引っ掛けタイルも特注で焼いてくれるところがある。F邸のタイルは多治見市の虔山釜で色のイメージを伝えて……こだわる方には、そういうこともできるようになってきた……タイルはモルタルで貼る湿式の工法が一般的という時代はもう終わったと感じる。……事務所を改装した時、外壁には接着剤で貼るタイプのタイルを採用したけど……長井君のアイデアだったよね?」
- 長
- 「はい。私は結構いい感じに仕上がったと思っているんですけど……引っ掛け工法は専用のサイディングを使う必要があるので、コストが高くなります。接着材で貼る場合は、普通のサイディングを下地に使えるので……それに、最近ではタイルの種類も多いので……現在工事中のS邸は、1階の外壁をタイル貼りにしていますが、接着剤で貼るタイプで設計しています。」
- 菅
- 「先日お客様がメーカーのショールームでタイル貼りのサンプルをご覧になって……あんなボードの上にタイルが貼ってあるだけで大丈夫ですか?という質問を受けた。タイルで防水をすると思っていたのに、あれでは雨がボードを直接濡らしてしまう。ボードに滲みた雨はどこへ行くのかって。」
- 長
- 「そうですね。接着剤で貼るタイプは目地も詰めないので……よく見ると、タイルの間から接着剤が見えたりしますよね。でも、タイルの下地は窯業系のサイディングですから……まあ、サイディングの裏でしっかり防水する必要はありますが。」
- 菅
- 「窯業系のサイディングは水を通さないというのは間違いです。大雨の時は水が滲みていると考えた方がいい。だから、滲み込んだ雨が壁の中に入らないように、通気層を作る、透湿防水シートでブロックするという設計をしなければいけない。じゃあタイルは何のために貼るのか?結局、タイルがサイディングを保護しているという考え方だよね。僕は、タイルの引掛け貼りが出始めた頃から採用しているんだけど……10年もするとモルタル貼りとの汚れの差は歴然とする。特に、木造や鉄骨造の建物はその差が大きい。」
※22 透湿防水シートとは、水は通さないが、湿気は通す性質をもつシート。主に木造建築物の外壁の屋外側に用いられる(⇒Wikipedia)。
外壁からの雨の浸入を防ぎつつも、壁内の湿気を屋外へ放出して内部結露を防ぐことができます。
※23 光触媒とは、光を照射することにより触媒作用を示す物質のこと。通常の触媒プロセスでは困難な化学反応を常温で引き起こしたり、また化学物質の自由エネルギーを増加させる反応を起こす場合がある(⇒Wikipedia)。
この反応を利用して、表面に付着した汚れを分解してしまうのが、光触媒コーティングです。(⇒商品例)
| ―いろいろな外壁 |
 |
▼木の壁 |
| ▲土の壁 |
 |
| ▼緑の壁 |
http://www.hekimenryokuka.com/example/building.html |
※24 デラクリートは、無機軽量骨材入りポルトランドセメントモルタルを芯材に、両面にガラス繊維ネットを埋め込んで補強したセメント系ボードを基材とした外・内壁材。仕上げ材に対する自由度が高く、曲面加工や通気構法にも対応可能。(⇒MRCデラクリート)
※25 アクリルリシンとは、薄付け仕上げ塗材です。適用素地は、コンクリート、スレート、窯業系サイディングボードなど。膜厚は3mm程度で、下地の小さなひび割れには追従できる。施工性が非常に高く、シーラーを下塗りした後、1~2回吹き付けて仕上げる。(⇒住宅リフォーム雑学辞典)
※26 湿式工法は、モルタル・コンクリート等の下地が固まらないうちにタイルを貼り付けます。「圧着貼り」、「団子貼り」、「ユニット貼り」があります。乾式工法は、サイディングなどの下地の上に接着剤や金物で固定します。「接着貼り」、「引掛け工法」があります。(⇒住宅建築専門用語辞典)

- 野
- 「今まで、外壁は窯業系のサイディングを使うことが多かったんですけど、今回古民家再生のF邸ではタイルを使えて……おもしろいなと思いました。もう少しいろんなテクスチャーの素材を使い分けたいのですが、予算の問題が。」
- 菅
- 「どういう素材が気に入っているの?」
- 野
- 「僕は土壁と、板貼りですね。そういう自然素材を使いたいという想いがあります。それから、目地なしの大壁の外壁ですよね。下地をボードじゃなくて木ずりにモルタル……そういう昔からの方法も見直して使っていければいいなあと思っています。」
- 田
- 「外壁に通気層※27をつくらないで、という方法に戻るというのはどうなんでしょうか?建物にはよくないイメージがあるんですけど……。」
- 野
- 「だから、うまく通気を取る工夫をして……」
- 田
- 「私も、何かうまくできる方法がないかなあと思います。塗り壁ならデラクリートかそういう専用サイディング下地しか選択肢はないのか?他にいい方法はないのかなぁと。」
- 野
- 「もっと素材感のあるもの……」
- 田
- 「しかも安く(笑)」
- 野
- 「そうそう。安くてサイディングに負けないものを考えたい。」
- 田
- 「鉄骨造の建物だと、どうしてもデラクリートだけど……木造だったら違う可能性もある……」
- 長
- 「そうですね。」
- 菅
- 「外壁は何といってもサイディングが主流だけど、ちょっとね……素材感がないですよね。あんまり面白くない。」
- 長
- 「なんかハウスメーカーの家と同じように見えてしまうから……私もサイディング以外の材料を使いたいなと思うんですけど、コストの面が……それから、板を貼るとメンテナンスがどうしても必要なので……その当たりを理解していないお客様には、なかなか勧められない。先日完成したK邸では、減額案を作る時、外壁の塗り壁をいっそサイディングにしてしまえば苦労しなくてよかったと思うんですけど……お客様が塗り壁にして欲しいと言われたわけじゃないから……でも、デザインとしては塗り壁にしてよかったし、喜んでもらえたと思っています。」
- 菅
- 「素材感のある材料を使うと、たいていお客さんは喜んでくれるみたいだけど……設計士として配慮するべきことは、メンテナンスがしやすい設計をすることだと思う。例えば板を貼るにしても、建物を壊さないと貼りかえができないなんてディティールにすると、これはもう大変なことになってしまうよね。結局、板の上にトタンを貼っちゃおうなんてことになる。板は、外壁の腰だけに貼っておくという手もある。腰板だけだったら、足場を組まなくても貼り変えられるし、塗装の塗り替えも簡単だよね。最近では、家のメンテナンスを楽しむ人たちが増えてきているように感じるから、フリーメンテナンスという観点ばかりを重視したデザインじゃなくてもいいんじゃないの。」
- 田
- 「今後使ってみたい外壁なんですけど……現在リフォームの設計を進めているH邸の関係で材料をいろいろ調べていたら……スイス漆喰※28という材料を見つけたんです。メーカーの説明には、いつまでも白いと書いてあるんですよ。それが本当なら使ってみたいと思いました。でも、汚れが自然に綺麗になる!みたいなことが書いてあって。」
- 菅
- 「それはちょっと危ないな(笑)。確かめてみる必要がある。」
- 田
- 「そうですよね。」
- 菅
- 「以前、この塗料を塗ると、雨の力だけで汚れが取れて、いつまでも外壁がきれいに保てますなんて触れ込みの塗料があって……お客様のご希望で塗ったことがあるけど……あまりその効果を感じない(笑)」
- 菅
- 「その他、エクステリアに関して、話したいことはない?」
- 小
- 「I邸を設計して思ったんですけど……広い庭が取れたので、素直に大きな窓を計画したら……もっと小さな窓にして下さいと言われました。南側に大きな窓を設けて庭を楽しむというのも、それほど好きじゃない人もいるのかなあと。そういう方には、坪庭みたいな閉じた庭をいくつか設けた方がいいのかも?と思いました。」
- 菅
- 「そうだね。以前設計したK邸はまさにそうだったよ。大きな窓を南側につけたんだけど、完成と同時に縦型ブラインドをつけられて……ほとんど閉めてみえるんですよ。それで光を入れたい時だけ操作する。まあ、設計という仕事は、お客様の価値観をよく理解しないといい結果がでないから、コミュニケーションを密にすることが必要だと思うよ。」
- 長
- 「お客様に望むことなんですが……家の周りに木を植えてもらいたいなあと思います。緑が少しでもあるだけで、建物が生き生きすとするので。」
- 田
- 「植栽の提案もできるといいですよね。ここにはこんな感じの木を植えたらどうですか程度のね。なかなか植栽工事まで本工事には入れてもらえないので。」
- 長
- 「住宅では、なかなか本工事に入れてもらえませんよね。ただ、樹木1本植えるにしても、株立か?幹が一本か?で全然雰囲気が違います。だから、アドバイスだけでもできたらいいなあと思いますねぇ。」
- 野
- 「先日完成したN邸は、市から緑化計画の規制を受けたので、かなりの量の木を植える必要があったんですが……木を植えたら、建物がぐっと引き立ちましたねぇ。」
- 長
- 「そうでしょうね。」
- 野
- 「特に、ご主人が植木屋さんぐらい詳しかったので……一緒に話し合って、楽しかったですよ。もちろん、予算の問題もあったんですけど……ケヤキは将来大木になるからこの位置にしようかとか、カヤは秋に落葉していい匂いがするから、この辺に植えようとか、シンボルツリーはどこに植えよう?なんて……こんな風に樹種を選んだり、植える位置を決めるのも面白いなぁと思いました。」
- 菅
- 「リフォームと増築をしたM邸は、お父様がその敷地を買う時から南東角に生えている桜の木をものすごく大事にされていた。」
- 田
- 「ああ、そうですね。増築もあの木を避けて、なるべく枝を落とさないように残して……毎年毛虫で大変だけど、と言いながら(笑)」
- 菅
- 「とても大切なことかもしれないね。聞くところによると、アメリカでは、元々生えている木が多ければ多いほどいい住環境だと評価されるらしいよ。」
- 野
- 「以前、安藤忠雄さんの講演会で、“建物を建てたら必ず木を植えてください。建物隠すんで”なんて言ってましたよ。安藤忠雄さんの設計する建物は隠すほどひどいんだ!」
- 全員
- 「あはは」
- 菅
- 「彼の設計する住宅はあまりにも無機質ですよねえ。どうしてあの人の設計する住宅が高く評価されるのかなあ?」