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2018.4.5

和風のウンチク:和室の「長押」と「蟻長押」について(菅野)

2018.4.5

Category: 知って得する和の技

格の高い和室には「長押(なげし)」をつけます。
「長押」とは、「鴨居(建具を嵌め込む上枠)」の上に取り付ける横材です。

もともと「長押」は、寺院建築に使われた構造材で、丸柱を両側から固定する三角形断面の大きな横材でした。


△奈良の唐招提寺

ところが時代が下るにつれ、部屋の格を表す装飾になったのです。

天井の高い和室には「長押」を二本、走らせることがあります。天井に近い「長押」を「蟻長押(ありなげし)」と呼びます。
下の「長押」から天井までの壁が大きすぎて、デザイン上バランスが悪い場合に設けますが・・・
「蟻長押」と天井の間の柱を壁で隠すと、軽快に仕上がります。


△「長押」と「蟻長押」

かつて、来日した世界的な建築家 ル・コルビジェが「日本建築は直線が多過ぎる」と批判したそうですが・・・逆に日本人は、平行に並んだ直線に美を感じるようです。

軒先の化粧垂木、窓の格子、障子の桟・・・数え挙げれば切りがありません。

〇「長押」の成はどの程度が適当でしょう?

私は柱の幅の8割を目安にして設計します。
柱の幅と同じ成の「長押」を時々見かけますが・・・少し単調な感じになります。

〇「長押」にはどんな樹種を使うべきですか?

柱が桧なら桧が無難でしょう。でも装飾材なのですから、品の悪くならない程度に楽しんでもいいと思います。以前、桧の柱に杉の「長押」を使いましたが、とても面白く仕上がりました。


△桧の柱に杉の「長押」

〇「長押」には柾目を使うべきでしょうか?

「長押」は和室の格を表すものですから、板目より高価な柾目、部屋の隅から隅まで継ぎのない材を使った方が格は上がります。ただ最近では、そこまで気づく人も、こだわる人も少なくなりました。

和室のしつらえに「格」を重んじるのか、「居心地」を求めるのか?
目的と予算に合わせて・・・・
柾目を板目に、一本物から二本継ぎに、場合によっては・・・「長押」を無くしてしまうのも楽しい(笑)。

基本を知った上で、和風のデザインをもっともっと楽しみましょう。


 

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