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2018.9.4

千葉県の浄土宗寺院で本堂の耐震診断。間取りを変えない補強方法を提案(前嶋)

2018.9.4

Category: 耐震補強

千葉県の浄土宗寺院から、銅板葺き屋根の木造本堂の耐震診断を依頼されました。

早速、福田、大江、長岡を同行し、一泊2日で現況調査を行いました。
また、調査2日目には所長の菅野も現地を訪れ、調査内容をチェックしました。



 
「地震に強くするためには、壁を増やさなくてはいけないと聞いていますが・・・法要に支障をきたすので、できるだけ壁を増やさない方法でお願いできませんか?」と住職。

今まで、多くの住職から同様の要望を頂戴しました。

確かに、いくら本堂が地震に強くなっても、使い勝手が悪くなるのは困ります。

耐震補強と使い勝手の両立は、補強方法を考える際、毎回頭を悩ませるポイントです。




壁(耐力壁)を増やして、建物の耐震力を向上させる補強は一般的で、効果も高い方法です。

しかし、出入り口や窓がなくなるため、人の流れが悪くなったり、堂内が暗くなるといった問題が生じます。

そこで・・・今回は、以前から練っていた、あの方法が使えないか?と考えました。

幸いにして、この本堂が以下の条件を満たしていたからです。
 
・銅板葺きで屋根が軽い
・土壁の粘りを耐震力に生かせる柔構造である

・床組みが高く、床下に十分な空間がある
・地盤増幅率が限界耐力計算(柔構造)の可能な範囲である


 さて、あの方法とは・・・

「耐力壁を床下に設け、床上の壁量をできるだけ減らす」


現況調査の結果を事務所に持ち帰り、早速、構造計算を行いました。すると・・・

『床下の耐力壁だけで、目標の耐震力を確保できる』という結果が得られました。

これで、使い勝手がよく、明るいままでの耐震補強が可能になりました。
最近は大きな台風が頻繁に訪れるので、念のため・・・台風時の安全も確認しましたが、これもクリアしました。

屋根が軽い本堂は、地震だけでなく、台風に対する補強も考慮する必要がありますので、ご注意ください。


調査から約1か月半後、菅野とお寺へ伺い、耐震診断の結果と補強方法を住職に説明し、工事費の概算金額をお伝えしました。

「そんな補強方法があるんですね。工事費も思っていたより安くなりそうで、安心しました。早速、役員の皆様に説明したいと思います」
「もし、必要でしたら、私たちが説明に伺いますので、遠慮なくお申し付けください」

菅野企画設計では、現況を詳細に調査した上で、常識にとらわれることなく、その伽藍に一番適した耐震補強をご提案します。

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